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出会いと友情によって咲いた本(寄稿)

2016.03.03

日々、学内の様々な情報を各Bloggerからお届けしている岩大エキスに、学内の職員さんが原稿をお寄せくださいました。
ありがたいことです。そして、ご寄稿いただくのはTHE★初。
今日は、そんな新たな視点からの記事です。新鮮な気持ちでご覧ください♪。

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突然ですが、本日は本学での「出会い」や「友情」から咲いた本について書いていきたいと思います。
・・・本なのに「咲く」のは何故?と思う方がいらっしゃると思いますが、その理由を今からご説明します。

今からさかのぼること約90年前、大正6年(1917年)7月1日、岩手大学農学部の前身となる旧盛岡高等農林学校で、当時の文芸同好会の学生12名によって1冊の文芸雑誌が誕生しました。その名も『アザリア』。岩大図書館内のアザリアギャラリーはここからとられています。誌名は当時校内に沢山咲いていたアザリアから採用されたとも。※西洋ツツジの花。
その中で、中心となった4名のメンバーがこちら。

ファイル 2181-1.jpg

 ※本学農学部附属農業教育資料館HP
(URL:http://news7a1.atm.iwate-u.ac.jp/edu/p3.html)からお借りしました。

写真前列左から、小菅 健吉(こすげ けんきち/栃木県出身)、河本 義行(かわもと よしゆき/鳥取県出身)。後列左から保阪 嘉内(ほさか かない/山梨県出身)、そしてのちに詩人・童話作家となる宮澤 賢治(みやざわ けんじ/岩手県出身)。4人は入学した年が異なりますが、全員同い年。そしてこの頃は制服があったので学ラン姿です。ちなみに賢治は、アザリアのメンバーと出会い、この頃から作品を積極的に発表していくようになったと考えられています。

農業を学び、志を同じくする若者同士は、寮・下宿での生活、勉学、趣味、時には手紙そしてアザリア(全6号)の紙上を通して友情を育んでいったといいます。青春ですね~。余談ですが、この頃の体験の一部が賢治の「銀河鉄道の夜」「風の又三郎」等の作品に反映されているそうです。
なお、盛岡高等農林学校卒業後の彼らについては、詳細を書くと大変長くなってしまうため、ここでは割愛させていただきますが、各々の進んだ道で、悩みや別れを経ながらも、手紙等で交流を続けていったということです。
彼らの一生の中で、盛岡高等農林学校時代の出会いと友情から咲いたものがアザリアという本でした。

そして、90年前に花開いたアザリアは、平成の世に同じような形で再び咲くことになりました。
それがこちら。

ファイル 2181-2.jpg

1月の岩手日報(地元の新聞)にも掲載されたので、ご存じの方がいらっしゃるかも?
関西地方在住の遥峰さんが自費出版された漫画小冊子「アザリアの咲いた本」です。館内の「ポランの間」で読むことができます。
※部屋からの持ち出し及び貸出はできません。

この度、遥峰さんから農学部附属農業教育資料館(旧盛岡高等農林学校本館)へ寄贈されました。同館は、大正元年竣工なので、大正4年・5年に入学した彼らもここに訪れた事があるはず。
数年前からアザリアのメンバーについて興味を持たれ、「メンバーについてより多くの人に知ってもらいたい」という願いのもと、出版されたそうです。中身はコミカルかつ分かりやすいアザリア入門漫画です。デフォルメされた人物達が可愛い♪

ファイル 2181-3.jpg

90年前の彼らと、平成に描かれた彼ら。遥峰さんの小冊子は、未来に誰かが彼らに出会うきっかけになるのでしょう (*^_^*)